越後にいきる家をつくる会

木を生かす
インタビュー。「百年使える木造住宅」越後にいきる家をつくる会 代表 村尾 欣一


この会を発足させたきっかけは
 「日本の技を思いきり使った家を建てたい。」そう思い、20年ほど前から、日本古来の建築技術を徹底して実施する大工集団と共に伝統構法による民家を造って来ました。そんな中、『新潟県森林組合連合会』でも、同様の志で県産材を使った家づくりを推進していることを聞き、大工と設計者、製材所、林業家をつなぐネットワークを作ろうということで、この会を発足しました。
 「地元の木を生かした家づくりをしたい」
 建築に関わる職人なら、誰もがそう想うものです。設計者もまた、大工が造りたくなるような家を設計したいと常に想っています。「木を生かす」という想いは皆一緒なのです。この会には、そういった気持ちを持った人たちの集まりです。

この会で推奨する家づくりの特長を教えて下さい
 新潟県産材を使い、木組みによる伝統構法で家づくりすることが大きな特徴ですが、本当の意味で木を活かした家を造るには、家づくりに関わる大工と設計者、そして製材所や林業家の方々の顔が見える信頼関係で結ばれていることが大切です。それができるのもこの会が推奨する家づくりの特徴だと思います。

県産材を使うこと、そして伝統構法の家に期待することは?
 江戸時代に造られた民家が今でも新潟に残っていますが、このような家のすばらしさは、室内の装飾はもちろん、骨組にこそあると言えるのです。表に出ない構造の部分に職人たちが力を注いだから、今でも家が残っているのです。
 私たちは、少しでも先人の知恵と技に追いついて行きたい。そのためには、厳しく今の自分たちの技を問い直し、誠実な家づくりをしていく必要があると考えています。
 そして、次の世代につないでいくためにも、「川上」と「川下」を結び、新潟の林業の再生をはかり、地域と共生する家づくりを推進していく必要があると思います。
 少しずつの積み重ねですが、これを何十年か続けていけば、やがて街の景観も変わって行くかもしれない。そんな望みも持っています。

家づくりの魅力とは?
 家は買うものでなく、つくり出すものです。
 設計者は、その土地の歴史や日照り、風を読み、そこに百年生きる家の骨格を考えます。
 また施工者(大工)は、原木市場で丸太に出会い、木々一本一本の個性(強さ・曲り・くせ)を読み、それらを「活かす」ことを考えながら、墨付けし、刻んでいきます。
 そして建て主は、設計者や施工者、さらには「木」を通して、たくさんの心ある人と繋がっていく。
家というのは、「木」で繋がった全ての人たちが一緒につくり出すドラマのようなものだと思います。
もちろん主役は建て主さん。
  そこに生まれる、出会いと感動の連続、これが家づくりの魅力なのではないでしょうか。

この会の今後の展望を教えて下さい
 業界全体の動向としては、コストや工期を重視したものや、ユニバーサルデザイン住宅が、今後も主流になるでしょう。
 一方、ゆっくりと地域や文化、将来を考えた生き方を支援しようと考える人たちが増えているのも事実です。
そういった方々と心をかよわせた家を、一軒でも多く建てていきたい、そう思っています。

百年生きるこまくさ保育園

 

村尾 欣一 (むらお きんいち)

昭和20年生まれ、新潟県新潟市出身。昭和44年関東学院大工学部建築学科卒、同年京都建築事務所入所。49年新発田総合高等学校職業訓練校建築科指導員、平成4年新潟職業能力開発短期大学講師を経て、同短期大学教授。平成18年退職。現在常勤講師。

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